第7回 ゴーサイ先生、健康診断について、教えてください。
みんな誰もがずっと健康で、病気や病院とは無縁が望ましいはず。そんな”病院いらず”の健康をどのようにつくるか?医療法人美﨑会・国分中央病院の理事長/藤﨑剛斎(ゴーサイ)が、一人の医師として本音で健康を語るブログ。元職員の株式会社シナプス代表/たけうちが聞き手として、お話をうかがいます。
※このブログはあくまで、ゴーサイ先生の個人的な意見と経験に基づき構成されるものです。個別の疾病や治療方法について、必ずしもその医学的な正確性や妥当性を保証するものではありません。
■健康診断と指標について
― 先月、年1回の健康診断を受けてきました。いくつかの検査で基準値を超えているものもあって…。
ゴーサイ先生 うーん、基準値は簡単じゃないよ。主観も入るけど、甘すぎるものが多いよね。でも、基準値が厳しすぎるものもある、血圧とかもね。一律に基準を決めていいか疑問。年齢とともに血管は変化していき、適正範囲は変わるもの。血圧の適正範囲はだんだん厳しくなっているけど、過剰な治療や投薬につながらないか心配な面はあるよね。あと総合的な判断も必須。その前提も踏まえてだけど、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:糖化ヘモグロビンの割合を示した指標です。HbA1cは過去1~2ヶ月前の血糖値を反映します。当日を含め短期間の血糖値の影響を受けません。)の基準値はあまあまだと思うね。
あと糖尿病の観点で言えば、健康診断でチェックする血糖値やHbA1cだけじゃ足りない。一番重要視したいのは、食事をした後の血糖値だね。食べた後に血糖値がパンっと上がるかどうか、血糖値スパイク(血糖値の急激な上下の変動のこと。例えば、食後は誰でも血糖値が上昇しますが、糖尿病予備軍の人はインスリン分泌の過不足により、血糖値の上下変動が非常に大きくなる場合があります。)が起きているか、起きていないか。この考え方はだんだん広がってきているよね。
■糖尿病と血糖値の問題
― 糖尿病と血糖値の問題。社内にも糖尿病の社員がいるので、他人事ではないです…。
ゴーサイ先生 この前はある眼科の先生がこう言っていたよね、ちゃんと検証は必要なんだけど。糖尿病の患者さんは食後に血糖値が上がったときに、血管の中のサイトカイン(主に免疫細胞から分泌されるタンパク質。本来、体に良い働きをするもの。)が分泌しすぎているようだと。それが血管障害につながっている可能性があると。血糖値は、空腹時は110mg/dl未満、食後なら140mg/dl未満が正常と言われている。ここからは例え話で誇張気味になるけど、じゃあAさん。空腹時は血糖値80mg/dl、で食後は200mg/dl、食後2時間で80mg/dlに戻るとしよう。次にBさんは、空腹時も食後も血糖値は常に150mg/dl。あり得ない仮定の話だよ。この両者を比較したとき、健康診断でチェックする空腹時血糖値の基準ではAさんはOKでBさんはNGだけど、実はBさんのほうがいいんじゃないか?という仮説を持ってる。
― えー。かんたんに言うと、変動するより、一定値で安定していたほうがいいのでは…ということですかね?
ゴーサイ先生 そう。人間の体は、変化にストレスを感じるものなんだよね。例えば体温、“熱”なんか顕著な例だよね。ある一時点の数値だけではなくて、変化を見ていく必要があるよね。これまでの経験からも、糖尿病を早期に発見して早期に治療するためには、空腹時の検査だけでは足りなくて、それでは発見が遅れると思っている。血糖値の変動のチェックで早く糖尿病を発見して、そして糖質に配慮した食事だね。